地下鉄に乗って 18:40

地下鉄に乗って (講談社文庫)

地下鉄に乗って (講談社文庫)

作者の略歴を読んで驚いた。
この本が新人賞と書いてあった。
しかも1995年。
まだ10年ほどしか経っていない。
今、浅田さんの本はどこにでもある。
だから、もっと昔から本を書いていたのだと思い込んでいた。


この本の中で印象に残ったのは2箇所。
息子を亡くした父がこんなセリフをはくところ。

「わかってる。まったくどいつもこいつも何てザマだ。
いったい俺が何をしたっていうんだ」
この「俺が」ってところ。
俺の親父も言いそうだ。
もしかしたら言わずに腹の中だけで
思うのかもしれないが。
ただ、物語の中では彼がどうして
そういう風になったのかが語られている。


もうひとつはけっこうどうでもいいところ。
「電話が遠い」という表現。
このところ耳にすることがめっきり少なくなった。
これが書かれた10年位前までは
自分も使っていたし、けっこうよく
耳にする表現だったように思うが。


戦後すぐの時代。
かなりキツい描写がしてある。
こんな状態がこの国にあったなんて
信じられないくらいだ。


前に「見てないことは絶対にわからない」と
街であったおじさんに言われた。
彼は一生懸命そのころのことを俺に話していた。
相槌を打つとすぐにそういわれた。
今の技術ではそれを追体験するのは絶対に無理だろう。
それが可能になれば・・・一番よいのだろうが、
彼らが生きているうちに可能になるとはとても思えない。